よくわからない質問に答えながら、気が付くと1時間が経過していた。
こんな、訳のわからない話しばかりで、ぼくの面接の結果はどうなるのだろうか?
いきなり不安がのしかかる。
それが表情に出てしまったのか、ようやくおじさんが名刺をとりにもどる。
そこには、探偵事務所の名称と、おじさんの名前、そして名前の上に“代表”の文字が・・・。
この人、実は探偵だったのだ。
ただのおじさんだと思っていたぼくは、かなり相手に失礼な態度をとってしまったのではないか?と不安になり、自分の行動を振りかえるが、特に変なことは言っていないし、やっていないだろう。
おじさん、ならぬ、探偵の代表さまは、面接の結果は1週間後、と言いたいところだが、気になるだろうから、今決めてしまおう、という。
そっちの方が気分的に重い気もするのだけれど・・・。
“本当に探偵になりたい、という気持ちがあるのなら、経験はなくてもいい”“けれど、簡単にできる仕事ではないし、簡単に覚えられるものでもない”とクギを刺された。
なんとなく、バカにされたくないという気持ちがわき上がり、“十分承知しています。”と答えてしまった。
代表は、自分が最初、探偵になろうと思ったとき、高い授業料を支払って勉強したのが、名古屋の探偵学校だった、と教えてくれた。
ぼくは、このとき初めて、探偵になるための学校があることを知った。
ここに面接に来る前に、ほかの探偵会社のことや、探偵という仕事について調べておけば良かった、と後悔していた。
それすら知らなかった自分にどきどきしてきた。
ところが、会話は、探偵学校の詳しいことにはふれず、“もし名古屋への出張があったら、行くことは可能か?”という質問。
代表いわく、その探偵学校時代の知り合いや、友人から、まれに手伝いを頼まれることがある、という。
もし、その場合、自分が大阪で調査が忙しいようであれば、変わりに行ってもらえるか?というもの。
ぼくは、まだ何も仕事についてわかりませんが、自分で可能であれば、いつでも行きます、と答えてしまった。
少し、探偵の話しを聞くだけで、どこかで探偵という仕事について、興味が出てきてしまったようだ。
あとで後悔することになる一言だった。 |