ぼくは、その白いセダンを追うことはせず、セダンが戻ってくるのを待つことにした。
もしかしたら、別の車が迎えにくる可能性もあるが、ここを離れるリスクより、ここで待って、もしものときに備えることにしたのだ。
ちょうど時計が1時間半経過したのを確認したとき、あの白いセダンがホテルに入っていくのを確認。ぼくの勘も捨てたもんじゃないな。
ぼくはさっきより余裕をもってカメラを構えて待機する。
かなり無駄な時間撮影していたけれど、今度はホテルを出て、こちらに向かってくる映像を撮ることができた。
しかも、ぼくの車を通過する際、対象者の横顔も、ちゃんとビデオに収めることができたのだった。
ぼくの探偵初日の仕事にしてはかなり良いものだったし、行けてるんじゃないか、なんて自画自賛してしまいたいくらいだった。
対象者は先ほどのマンションに帰り、結局この日はとくに大きな動きもなく、4時半になったころ、白いセダンに乗り込んだ対象者が自宅に帰るまでを確認した。
それからさらに4日の調査でわかったこと。
それは、水曜日は自宅から出てくることがなく、お休みだろうということと、それ以外毎日彼女を迎えにくる車が違うということ。
そして、あの駐車場に出入りする車が、少なくても5台は超えているということ。
ぼくはすべての車のナンバーを記録していた。
それを代表に報告すると、“大将はあくまで彼女で、ほかの車は関係ない”なんて嫌味な言い方をされてしまったのだ。
そして、調査4日目も終わろうとしていたとき、初めて意変に気がついたのだ。
この日、もう動きはなく、また自宅に帰るだけだろうと思い、道路を横断したところの空き地で見守ることにしたのだ。
ところが・・・。
あきらかに空き地というところにぼくは駐車していたのだけれど、不自然に入ってくる1台の乗用車。
その瞬間、初日にやってきたあの古びた乗用車だということを確認し、ぼくはかなり焦ってしまった。
ナンバーもまちがいなくあの車だった。
とっさにぼくは、そのセダンの真横を通りすぎ、細めの道路に出た。バックミラーを確認すると、Uターンした乗用車がぼくの車の方にまさに向かおうとしているところだった。
目の前には片側2車線の道路。
左折してぼくのいる道に入ってきた車にもお見覚えが!!!
しかも運転手は間違いなくぼくを見ながら通り過ぎた。
ぼくは隙を見て、広めの道路を横断。
ぼくを追っていただろう紺の乗用車は、どんどんくる車にタイミングを失っていた。
ほっとしながらも、ぼくはさらに逃げて、乗用車との距離を広げようと思った。 |